社員が自分で考えて動かない原因は能力不足だけではない|指示待ち社員が増える職場で見直すこと
- 佐藤孝一
- 7月22日
- 読了時間: 6分
更新日:8月3日
従業員が自分で考えて動かない理由とその解決策

従業員が自発的に動かない理由
「うちの社員は、自分で考えて動かない」「言われたことはするが、それ以上のことをしない」「何でも確認してくる。もっと自走してほしい」
このように感じている経営者は少なくありません。人手不足が続く中、経営者や上司がすべてを指示し、確認し、最後に判断する状態には限界があります。
今いる社員が自分で考え、状況に応じて判断し、力を発揮できる職場をつくりたいと考えるのは自然なことです。しかし、社員が自分で考えて動かない原因をすぐに「能力が足りない」「やる気がない」「最近の若い人は受け身だ」と判断すると、本当の原因を見落とすことがあります。
社員が動かないように見える背景には、社員が自分から動きにくい職場状態が隠れている可能性があります。
動くことができない社員なのか、動きにくい職場なのか
まず分けて考えたいのは、自分で考えて動くことができない社員なのか、自分で考えて動きにくい職場なのかという点です。
社員に「もっと自分で考えてほしい」と伝えるだけでは、行動は変わりにくいものです。自分で考えるためには、判断材料が必要です。判断するためには、基準が必要です。行動するためには、どこまで任されているのかが見えている必要があります。
例えば、職場に次のような状態はないでしょうか。
仕事の目的が共有されていない
誰が何を担当するのか曖昧になっている
どこまで自分で判断してよいのか分からない
失敗したときに強く責められる
提案しても反応が返ってこない
頑張りや工夫を見てもらえていない
評価の基準が分かりにくい
このような状態が続くと、社員は自分で判断するよりも、指示や確認を待つ方が安全だと考えるようになります。これは単なる怠慢とは限りません。職場の中で、自分から動くための安心感や前向きさが弱くなっている可能性があります。
製造業と介護現場で感じた「判断しにくさ」
私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年働いてきました。メーカーの開発・試作部門では、品質や納期を守りながら、試作の結果を確認し、次の方法を考えることが必要でした。
一方で、目的や条件が十分に共有されていなければ、本人なりに工夫しようとしても、「どこまで変えてよいのか」「勝手に進めてよいのか」が分かりません。介護現場でも、利用者の状態によって対応を考える必要があります。
しかし、判断の範囲や相談の基準が曖昧であれば、職員は何か起きるたびに上司や先輩へ確認するようになります。働く側から見ると、確認が多いのは、何も考えていないからではありません。「自分で決めて問題になったら困る」「前に判断したときに注意された」「上司によって言うことが違う」と感じている場合もあります。
自分で考えて動いてほしいのであれば、本人の意欲を求めるだけでなく、判断しやすい環境を整える必要があります。
最初に見直したいのは仕事の目的
社員が自分で考えて動かない職場で、最初に見直したいのは仕事の目的です。目的が見えなければ、仕事は指示された作業になりやすくなります。自分で考えて動くとは、勝手に行動することではありません。目的に沿って、自分で判断できることです。
役割と判断範囲が曖昧だと確認が増える
次に見直したいのは、役割と判断範囲です。経営者や上司からすると、「それくらい自分で判断してほしい」と考えることが多いでしょう。しかし社員からすると、「本当に自分で決めてよいのか分からない」という場合があります。
例えば、次のような基準を明確にします。
この条件に該当したら上司へ相談する
通常対応は任せるが、例外が起きたら報告する
この範囲であれば、方法は本人が工夫してよい
安全や法令に関わることは必ず確認する
判断範囲が分かると、社員は安心して動きやすくなります。反対に、判断基準がなく、上司の気分や状況によって対応が変わる職場では、社員は確認を増やします。その結果、経営者からは「自分で考えない社員」に見えると思います。
相談しにくい職場では、指示を待つ方が安全になる
社員が自分で動くためには、分からないことや判断に迷ったことを相談できる必要があります。ところが、相談したときに、「それくらい自分で考えて」「前にも説明したよね」「今忙しいから後にして」といった反応が続けば、社員は相談を控えるようになります。
相談できないまま自分で動いて失敗すれば、今度は「なぜ先に聞かなかったのか」と注意されることもあります。これでは、社員はどのように行動すればよいか分かりません。相談しやすくすることは、上司がすべて答えを与えることではありません。
失敗への反応が、次の行動を変える
社員が自分で考えて動けば、うまくいかないこともあります。そのとき、失敗した事実だけを強く責められると、社員は次から自分で動くことを避けやすくなります。私自身も、気づいたことを上司へ伝えたことで関係が悪くなり、その後、同じような場面で発言をためらうようになった経験があります。
一方で、問題を伝えたときに、「教えてくれてありがとう」と受け止めてもらえると、次も伝えやすくなります。同じ社員でも、行動した後にどのような反応が返ってくるかによって、その後の相談や提案は変わります。
失敗が起きたときは、責めるだけで終わらせず、次の点を整理します。
何が起きたのか
なぜ起きたのか
次は何を変えるのか
どの段階で相談するのか
本人だけでなく仕組みに問題はなかったか
失敗を放置する必要はありません。ただし、失敗したことと、自分で考えて行動したことを分けて見る必要があります。
頑張りや工夫を具体的に伝える
社員が自分から動き続けるためには、自分の行動を見てもらえている実感も重要です。結果だけを見ていると、日々の小さな前進は見落とされます。
例えば、
問題を早めに報告した
作業手順を分かりやすく整理した
利用者への説明方法を工夫した
前回の失敗を踏まえて確認を増やした
自分の方法を新人へ共有した
といった行動です。
まとめ
社員が自分で考えて動かない原因は、能力不足や意欲の低さだけではありません。仕事の目的が分からない。役割や判断範囲が曖昧になっている。相談しにくい。提案しても反応がない。失敗すると強く責められる。このような職場状態では、社員は自分で判断するより、指示を待つ方が安全だと考えます。
自走を求める前に、目的、役割、判断範囲、相談のしやすさ、失敗への反応、工夫や前進への評価を見直すことが大切です。なお、社員へ危機感を持たせれば、自分から動くようになるとは限りません。
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この記事を書いた人
メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。働く側として経験した、役割や判断範囲の分かりにくさ、相談や提案への反応による行動の変化と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。



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