孝(こう)
社会保険労務士事務所

佐藤孝一
2025年3月27日
仕事と育児・介護の両立支援
こんにちは、社会保険労務士の佐藤孝一です。
令和6年5月に育児・介護休業法が改正され、令和7年(2025年)4月から段階的に施行されます。
◆ 背景にあるのは、人口減少と仕事と育児・介護の両立
日本の人口は2008年をピークに減少を続けており、**2070年には9,000万人を下回り、高齢化率は約39%**に達する見込みです。
出産後も約7割の女性が仕事を続けており、育児や介護と仕事の両立支援は、もはや“経営課題”になりつつあります。
また、夫の家事・育児参加時間が長いほど、妻の継続就業率や第2子以降の出生率が高いという傾向も確認されています。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen24/dl/kekka_gaiyou.pdf
たとえば、男性正社員が育児休業を取得しない理由としては、
「収入を減らしたくなかった」
「職場の雰囲気的に取りづらかった」
「上司や会社の理解がなかった」
「自分にしかできない仕事があった」
など、“制度があっても使えない”空気が障壁になっていることが分かっています。
さらに、介護や看護を理由とする離職者も年々増加しており、人材の確保・定着という観点からも、両立支援は喫緊の課題です。
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf
◆ 2025年4月から始まる主な改正ポイント
✅ 「子の看護休暇」が「子の看護休暇等」へ名称変更の見直し
対象年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生修了まで」に拡大
理由に、入園式・卒園式などの行事参加も追加
▶ 単なる“看護”にとどまらず、子の世話、行事への参加も可能な制度に。
✅ 残業免除(所定外労働の制限)の対象拡大
対象が「3歳未満」から「小学校就学前の子どもを育てる労働者」に拡大
▶ 保育園に預けていて、負担が大きい時期に配慮(3歳以上も充実させる)
✅ テレワークが短時間勤務制度の代替措置に
3歳未満の子を育てる社員に対し、テレワークの導入が新たに制度化
▶ 選択肢を拡充
✅ テレワーク導入の“努力義務化”
3歳未満の子を育てる社員に、テレワークの選択肢を提供するよう努めることが事業主に求められます。
▶ 選択肢を拡充
✅ 育児休業取得状況の公表義務が拡大
常時雇用1,000人超 → 300人超の事業主も対象に
▶ 特に男性育休取得率が社会的に“見える化”される時代へ
✅ 介護離職防止のための義務強化
家族の介護に直面した社員に対して、両立支援制度などの個別説明・意向確認が義務化
家族の介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度などの情報提供
▶ いざという時に、「相談できる企業かどうか」が社員の判断基準になります。
◆ 経営者の皆さまへ:この改正を“人材戦略のチャンス”に
今回の改正は、単に制度を「知っておく」だけでは不十分です。実際に使われる仕組みにできているか、職場の風土として根づいているかが問われています。
そしてそれは、社員が長く安心して働ける職場をつくるという意味でも、人材の採用・定着・育成に直結するテーマです。
ご相談は当事務所まで連絡下さい