孝(こう)
社会保険労務士事務所

佐藤孝一
2026年9月8日
経営者に見えている職場と、社員が感じている職場は、同じとは限りません。
「何かあったら、すぐに相談してほしい」
経営者が日頃から社員にこう伝えている会社でも、問題が起きてから報告されるまでに時間がかかることがあります。
社員が一人で問題を抱え込み、経営者に伝わったときには対応が難しくなっている。
経営者としては、「相談していいと伝えているのに、なぜもっと早く言わなかったのか」と感じると思います。
しかし、社員には同じ職場が違って見えている可能性があります。
経営者には「相談できる職場」に見えている
経営者は、相談を拒んでいるわけではありません。
むしろ、社員から相談されれば話を聞き、必要な指示を出そうと考えています。相談窓口を設けたり、会議で意見を求めたりしていると思います。
ところが、社員が見ているのは、制度や経営者の意図だけではありません。日常の小さな場面から、「今、相談しても大丈夫か」を判断しています。
社員は経営者の反応を見ている
例えば、経営者がいつも忙しそうにしていれば、社員は「この程度のことで時間を取らせてはいけない」と考えるかもしれません。
以前、別の社員がミスを報告したときに強く注意されている場面を見ていれば、「自分も責められるのではないか」と感じることがあります。
経営者としては、そのときの状況に応じて発した言葉かもしれません。
しかし、社員にとっては「相談したときにどう扱われるか」を判断する材料になります。
ここに、経営者と社員の見え方の違いが生まれます。
経営者は「いつでも相談してよい」と考えている。
社員は「相談してよい内容やタイミングが分からない」と感じている。
どちらかが間違っているとは限りません。立場が違えば、見えている場面や受け取り方も異なるからです。
報告の遅れは、本人だけの問題とは限らない
報告が遅れると、「責任感が足りない」「仕事に対する意識が低い」と本人の問題にしたくなることがあります。
もちろん、本人の判断に原因がある場合もあります。しかし、職場の側にも次のような原因が隠れているかもしれません。
・何を、どの段階で報告するのか決まっていない
・上司によって判断基準が違う
・悪い情報を伝えたときの反応が厳しい
・定期的に進捗を確認する機会がない
・相談する相手や方法が明確になっていない
このような状態では、社員は問題が小さいうちは「もう少し自分で何とかしよう」と考えます。
そして、自分では解決できなくなってから報告することになります。
その結果、手戻りが増え、顧客対応が遅れ、経営者が急いで問題処理に入らなければなりません。
相談しにくさは、人間関係だけの問題ではありません。仕事の停滞や経営者の負担増加にもつながる経営上の問題です。
最初に確認したい一つの場面
いきなり大きな制度を導入する必要はありません。
大切なのは、最初から本人を責めないことです。
「なぜ黙っていたのか」と聞くと、社員は自分を守る説明をしやすくなります。
「どの時点で気づいたか」「何が相談を難しくしたか」と、出来事を順番に確認する方が、改善すべき点を見つけやすくなります。
経営者と社員では、職場の見え方が違います。
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人が辞めにくく、少ない人数でも仕事が回る会社をつくるための第一歩は、誰かを責めることではありません。
まず、経営者から見えている職場の状態を確認することです。
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