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人が辞めにくい職場の条件|マズローの欲求5段階説から考える

更新日:3 日前


製造現場で協力する社員と、介護施設で利用者を支える職員の様子。安心感や承認、つながりのある人が辞めにくい職場を表している。

私は、最初に就いた医療機器の営業職を約8か月で退職しました。

当時は、仕事を続けられなかった自分に対して、

「自分には働く力がないのではないか」

「どの仕事に就いても長く続かないのではないか」という不安がありました。


しかし、その後に入ったメーカーの開発・試作部門では、約15年間働くことができました。さらに、介護の現場でも約11年間働いてきました。


営業職を短期間で退職した自分と、メーカーや介護の仕事を長く続けた自分は、同じ人間です。


それでも、仕事の内容、職場環境、周囲との関係、任される役割が変わることで、働き続けられるかどうかは大きく変わりました。


この経験から、私は次のように考えるようになりました。

人が職場で力を発揮できるか、長く働き続けられるかは、本人の能力や我慢強さだけで決まるものではない。

・職場に安心できる土台があるか。

・自分の居場所があると感じられるか。

・努力や工夫を認めてもらえるか。

・仕事を通じて成長できると思えるか。


こうした職場の状態も、人が働き続けるうえで大きく関係しています。

このことを整理する際、私が参考になると感じているのが、マズローの理論です。


マズローの理論を、どのように捉えるか


マズローの欲求理論は、人間の欲求を次の5つに整理しています。

  1. 生理的欲求

  2. 安全の欲求

  3. 所属と愛情の欲求

  4. 承認の欲求

  5. 自己実現の欲求


一般的には、下の段階の欲求が満たされると、次の段階の欲求が強くなる「欲求5段階説」として知られています。


ただし、人の欲求が必ずこの順番どおりに現れると、科学的に証明されているわけではありません。


そのため、マズローの理論を、すべての人に一律に当てはまる法則として扱うことには慎重であるべきでしょう。


それでも、私自身の約26年間の現場経験を振り返ると、マズローの理論が示している基本的な方向性は正しいと感じています。


特に実感するのは、安心して働けない状態では、人は成長や挑戦に向かいにくいということです。


・職を失うかもしれない。

・生活が維持できないかもしれない。

・質問すると責められるかもしれない。

・失敗すると強く否定されるかもしれない。


このような不安を抱えているときに、

・「もっと自分で考えてほしい」

・「新しいことに挑戦してほしい」

・「仕事にやりがいを持ってほしい」

と言われても、前向きに動くことは簡単ではありません。


したがって、この記事ではマズローの理論を、厳密な科学的法則としてではなく、

職場で何が不足しているのかを考えるための実践的な枠組みとして扱います。


1.生活を支える条件が整っているか


働く人にとって、給与は生活を維持するための重要な条件です。

・食事をする。

・住居を確保する。

・家族との生活を守る。

・必要な医療や教育を受ける。


こうした生活の土台が不安定であれば、仕事を通じた成長や自己実現まで考える余裕は生まれにくくなります。


ただし、生活を支える条件は給与だけではありません。

・適切に休憩を取れるか。

・必要な休日を確保できるか。

・長時間労働や過度な負担が続いていないか。

・勤務の予定が頻繁に変わり、私生活が不安定になっていないか。


給与が支払われていても、十分に休めず、心身の疲労が蓄積していれば、働き続けることは難しくなります。


2.安心して質問や相談ができるか


マズローの5段階欲求説でいう「安全の欲求」は、職場において非常に重要だと私は感じています。


安全とは、事故が起きないことだけではありません。

・質問しても責められない。

・困ったときに相談できる。

・上司の気分によって指示が変わらない。

・就業ルールや評価基準がある程度明確になっている。

・休暇や制度を利用しても、不利益を受ける心配がない。


こうした心理的、制度的な安心も含まれます。

私はメーカーの開発・試作の仕事では、最初から正解が決まっているとは限りません。


実際に加工してみなければ分からないこともあります。途中で方法を見直したり、他の人に確認したりする必要もあります。


このような仕事で、質問するたびに責められたり、失敗を強く否定されたりすれば、次第に新しい方法を試さなくなります。


自分で考えるよりも、言われたことだけを行う方が安全だからです。


社員に自分で考えて動いてほしいのであれば、まず、考えたことを口に出しても大丈夫だと思える職場にする必要があります。


3.職場の一員だと感じられるか


人は、給与や労働条件だけで職場に定着するわけではありません。


・自分の居場所がある。

・困ったときには助けてもらえる。

・自分の仕事が周囲につながっている。


こうした所属感も、非常に重要であると感じています。


介護の現場では、一人の職員だけで仕事を完結させることは難しく、利用者の状態や

介助方法、注意点などを職員同士で共有する必要があります。


・忙しいときに声をかけ合えるか。

・分からないことを相談できるか。

・負担が特定の人に集中していないか。


こうした日常の関係が、働く人の安心感を左右します。

制度が整っていても、職場で孤立していると感じれば、気持ちは少しずつ会社から離れていきます。


退職を申し出る前から、本人の中ではすでに「この職場に自分の居場所はない」という判断が始まっているかもしれません。


4.努力や工夫が認められているか


職場では、問題や失敗は目につきやすい一方で、日常の小さな貢献は見落とされがちです。


・新人に仕事を教える。

・トラブルが起きる前に準備する。

・他の人が働きやすいように作業手順を工夫する。

・利用者や顧客に合わせて説明方法を変える。

・誰かが休んだときに仕事を補う。


こうした行動は、問題が起きなかったからこそ、成果として見えにくい場合があります。


しかし、社員からすれば、工夫しても何も反応がなく、失敗したときだけ指摘される状態が続けば、

「頑張っても変わらない」

「余計なことをしない方がよい」

と感じるようになります。


すぐに退職しなくても、質問、提案、報告、改善の工夫といった前向きな行動が少しずつ減っていきます。


社員が以前より素直になり、反対意見を言わなくなったように見えるときも、必ずしも良い変化とは限りません。


会社への期待を失い、何を言っても変わらないと判断している可能性があります。


5.成長や仕事の意味を感じられるか


生活が安定し、安心して働けるようになると、人は次第に、

「もっとできることを増やしたい」

「自分の経験を活かしたい」

「誰かの役に立ちたい」

「次の仕事に挑戦したい」

と考えるようになります。


すべての人が同じ形で成長を求めるわけではありません。

役職に就くことを望む人もいれば、専門技術を高めたい人もいます。

後輩に教えることに意味を感じる人もいれば、利用者や顧客から感謝されることにやりがいを感じる人もいます。


重要なのは、会社が考える成長を一方的に押しつけることではありません。

・その人が何をできるようになりたいのか。

・どのような役割で力を発揮しやすいのか。

・何に仕事の意味を感じているのか。


こうしたことを確認する必要があります。


私自身、営業職では長く働くことができませんでしたが、メーカーの開発・試作部門では、依頼されたものを形にするために考え、工夫する仕事を続けることができました。


介護の現場では、利用者一人ひとりの状態に合わせて対応することや、職員同士で情報を共有することを学びました。


そして現在は、これらの経験を社会保険労務士としての仕事に活かそうとしています。

去の経験が現在の仕事につながり、自分の経験が誰かの役に立つと感じられることも、働く前向きさにつながっています。


欲求は階段というより、重なり合う土台


実際の職場では、マズローの5つの欲求段階が、きれいに一段ずつ満たされるわけではありません。


生活の安定、安心、所属感、承認、成長は、互いに重なり合っています。


給与が高くても、毎日強く叱責される職場では、安心して働けません。


人間関係が良くても、努力が評価されず、将来の見通しがなければ、働き続ける理由を失うことがあります。


成長の機会を与えても、失敗を許さない職場では、社員は挑戦できません。


したがって重要なのは、

「この社員は、マズローの何段階目にいるのか」

と分類することではありません。


見るべきなのは、

現在の職場で何が満たされ、何が不足しているのか。

その不足によって、社員のどのような行動が失われているのか。ということです。


人が辞めにくい組織には「安心」と「成長」がある


私の経験から、人が辞めにくく、力を発揮しやすい組織には、大きく分けて二つの状態が必要だと考えています。


一つ目は、

安心して働ける状態です。

給与、労働時間、休日、就業ルール、ハラスメント対策、相談体制などを整え、過度な不安を抱えずに働ける土台をつくります。


二つ目は、

前向きに働ける状態です。

・努力を認める。

・役割や仕事の目的を伝える。

・本人の強みを活かす。

・成長や挑戦の機会をつくる。

・自分の仕事が誰かの役に立っていると感じられるようにする。


労働法を守り、制度を整えることは重要です。

しかし、制度だけで所属感、承認、成長実感が生まれるわけではありません。


反対に、やりがいや成長だけを強調しても、休めない、相談できない、ルールが曖昧という状態では、人は安心して働き続けられません。


安心が成長を支え、成長が働き続ける理由をつくる。

この関係を整理したとき、私は、マズローの理論が示している方向性は、職場の現実に合っていると感じます。


このブログを書いた人


私は、営業職を約8か月で退職する一方、メーカーの開発・試作部門では約15年間、介護現場では約11年間働いてきました。

この経験から学んだのは、同じ人でも、仕事、職場、役割が変われば、発揮できる力も変わるということです。


無料診断


孝(こう)社会保険労務士事務所では、職場の安心を整理する「労務リスク診断」と、達成感や承認、成長実感を整理する「前向きさ診断」をご用意しています。

人が辞めにくく、今いる社員が力を発揮できる職場づくりの第一歩として、現在の職場に不足しているものを確認してみてください。


無料労務リスク診断 URL:https://www.koh-sharousi.com/ansin


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