top of page

採用しても人が定着しない原因|中小企業が見直したい5つの職場状態

執筆者の写真: 佐藤孝一
佐藤孝一
6月23日
読了時間: 13分

更新日:9月8日


工場で職場環境を話し合う上司と若手社員、介護施設で利用者を囲みながら定着しやすい職場づくりを検討する介護職員の様子

「求人を出しても応募が少ない」「ようやく採用できても、1年以内に辞めてしまう」「若手が仕事を覚える前に退職してしまう」

このような悩みを抱えている中小企業は少なくないと思います。


人手不足が続く中、求人広告を見直す、採用サイトを整える、給与や働き方を改善するなど、採用力を高める取り組みは重要です。


ただし、採用を強化しても人が定着しない状態が続く場合は、入社後の職場状態も確認する必要があります。


採用しても人が定着しない原因は、本人の意欲や能力、給与だけとは限りません。

社員が安心して働けるか。自分の役割を理解できているか。頑張りや成長を実感できているか。

こうした職場状態が、働き続けやすさに影響していることがあります。


人が定着しない状態は、残っている社員にも影響する


離職が続くと、採用や教育にかかる費用が増えるだけではありません。

退職した社員の仕事が、残っている社員へ集中することがあります。


その結果、

  • 業務量が増える

  • 休みにくくなる

  • 新人教育の負担が繰り返される

  • 「また辞めるのではないか」という不安が広がる

  • 頑張っている社員ほど疲弊する

といった状態が起きやすくなります。


そして、残った社員の負担が増えることで、さらに離職が続くこともあります。

採用活動と同時に、今いる社員が安心して働き続けられる状態になっているかを確認することが大切です。


私自身の経験


私は、メーカーの開発・試作部門では約15年、介護現場では約11年働いてきました。

同じ自分であっても、仕事内容、職場環境、任される役割によって、力を発揮できるか、仕事を続けられるかは大きく変わります。


メーカーの開発・試作部門では、試作した結果を確認し、原因を考え、次の方法を試す仕事に携わりました。


介護現場では、利用者の状態に応じた対応や、周囲との情報共有が求められました。


業種は異なりますが、どちらの職場でも、

  • 分からないことを相談できるか

  • 自分の役割が分かるか

  • 工夫や努力を見てもらえるか

  • 少しずつできることが増えていると感じられるか

によって、仕事への向き合い方は変わると感じてきました。


この経験から、人が定着しない原因を本人だけに求めるのではなく、職場の状態も確認する必要があると考えています。


退職の前に見られる小さな変化


社員は、ある日突然辞めたように見えることがあります。

しかし、その前から職場での行動に小さな変化が表れていることがあります。


例えば、次のような変化です。

  • 相談が減る

  • 会議で発言しなくなる

  • 改善提案をしなくなる

  • 指示された範囲だけで仕事をする

  • 自分なりの工夫を共有しなくなる

  • 周囲との関わりが減る

  • 「大丈夫です」と答えることが増える

もちろん、これらの変化がすべて退職につながるわけではありません。


ただし、以前は質問や提案をしていた社員の発言が減っている場合は、

「問題がなくなった」と判断するだけでなく、

「言っても変わらない」「余計なことを言わない方が安全」「会社に期待しなくなった」

と感じていないかを確認する必要があります。


見直したい職場状態① 相談しにくくなっていないか


社員が困ったときに相談できない職場では、小さな問題が表に出にくくなります。


例えば、

  • ミスを報告しにくい

  • 忙しそうな上司へ話しかけにくい

  • 質問すると能力不足だと思われそう

  • 提案しても面倒そうな反応をされる

  • 話を最後まで聞いてもらえない

といった状態です。


相談しにくい状態が続くと、経営者や管理者からは、現場で起きている問題が見えにくくなります。


そして退職の申し出を受けたときに、

「何も言っていなかった」「問題なく働いていると思っていた」と感じることがあります。


重要なのは、「何でも相談してください」と伝えることだけではありません。

社員が相談したときに、最後まで話を聞き、相談したことを否定せず、必要な返答をすることです。


見直したい職場状態② 評価・ルール・役割が曖昧になっていないか


社員が安心して働くためには、職場の基準が分かることも重要です。


例えば、次のような状態が続くと、不安や不公平感につながります。

  • 何を頑張れば評価されるのか分からない

  • 上司によって判断が異なる

  • 昇給や昇格の基準が見えない

  • 特定の社員だけルールの運用が違う

  • 誰が何を担当するのか曖昧

  • どこまで自分で判断してよいか分からない


基準が曖昧な職場では、社員は仕事そのものよりも、

「上司の機嫌を損ねないか」「勝手に判断して注意されないか」を気にするようになります。


その結果、何でも確認する、指示されたことだけを行うといった行動が増えることがあります。


社員が自分で判断しやすくするためには、役割、責任、判断範囲、評価基準を分かりやすくすることが必要です。


見直したい職場状態③ 頑張りを認められている実感があるか


人は、給与だけで仕事への前向きさを保てるとは限りません。

自分の努力や工夫を見てもらえていると感じることも重要です。


例えば、

  • 成果だけが評価される

  • 裏方の仕事が見過ごされる

  • 誰かが休んだときの応援が当然になっている

  • 改善提案をしても返答がない

  • 前よりできるようになったことを伝えられない

といった状態では、社員は認められている実感を持ちにくくなります。


見直したい職場状態④ 仕事の目的や役割が見えているか


社員が指示待ちに見える場合、意欲不足だけが原因とは限りません。

そもそも、

  • なぜこの仕事を行うのか

  • 誰の役に立つ仕事なのか

  • 自分は何を任されているのか

  • どこまで自分で判断してよいのか

が分からない可能性があります。


見直したい職場状態⑤ 成長している実感を持てるか


若手社員に限らず、

「この職場で働き続けて、自分は成長できるのか」という感覚は、定着に関わります。


成長支援というと、研修や資格取得を思い浮かべるかもしれません。


しかし、成長実感は日々の仕事の中でも生まれます。

  • 前よりできる仕事が増えた

  • 新しい仕事を任された

  • 自分で判断できる範囲が広がった

  • 失敗後に改善できた

  • 上司や先輩から変化を認めてもらえた

  • 次に目指す役割が見えている

こうした実感があると、社員は自分の将来と今の仕事を結びつけやすくなります。


反対に、毎日同じ仕事を繰り返し、成長や役割の広がりを感じられない状態が続くと、

「このままここにいても変わらない」と考えるきっかけになることがあります。


人の定着には「安心」と「前向きさ」の両方が必要


人が定着しやすい職場には、まず安心して働ける土台が必要です。


安心して働くための土台

  • 困ったときに相談できる

  • 労働時間や休日に過度な不安がない

  • 職場のルールが分かる

  • 評価や役割の基準が見える

  • ハラスメントへの対応がある

  • 情報が必要な人へ共有される

その上で、仕事への前向きさを支える状態も必要です。


仕事への前向きさを支えるもの

  • 達成感

  • 認められている実感

  • 仕事への誇り

  • 使命感や責任感

  • 成長実感

  • ステップアップしている感覚

安心の土台が弱い状態で、社員へ挑戦や成長だけを求めても、社員は守りに入りやすくなります。


一方で、安心して働けても、仕事への手応えや成長実感がなければ、前向きさは弱くなることがあります。


だからこそ、人の定着を考えるときは、安心と前向きさを分けて確認することが重要です。


最初に確認したいこと


採用しても人が定着しない場合は、次の項目を確認してみてください。

  • 社員が困ったときに相談できるか

  • 相談や提案に返答しているか

  • 評価や職場ルールが分かりやすいか

  • 役割や判断範囲が明確か

  • 頑張りや工夫を具体的に伝えているか

  • 仕事の目的を共有しているか

  • 成長や役割の広がりを感じられるか

  • 退職前の小さな変化を見落としていないか

すべてを一度に変える必要はありません。


まず、自社ではどこが弱くなっているのかを整理することが、改善の第一歩です。


従業員が自分で考えて動かない理由とその解決策


工場で上司の指示を待つ若手社員と、介護施設で先輩職員に確認しながら利用者へ対応する若手職員の様子

従業員が自発的に動かない理由


「うちの社員は、自分で考えて動かない」「言われたことはするが、それ以上のことをしない」「何でも確認してくる。もっと自走してほしい」


このように感じている経営者は少なくありません。人手不足が続く中、経営者や上司がすべてを指示し、確認し、最後に判断する状態には限界があります。


今いる社員が自分で考え、状況に応じて判断し、力を発揮できる職場をつくりたいと考えるのは自然なことです。しかし、社員が自分で考えて動かない原因をすぐに「能力が足りない」「やる気がない」「最近の若い人は受け身だ」と判断すると、本当の原因を見落とすことがあります。


社員が動かないように見える背景には、社員が自分から動きにくい職場状態が隠れている可能性があります。


動くことができない社員なのか、動きにくい職場なのか


まず分けて考えたいのは、自分で考えて動くことができない社員なのか、自分で考えて動きにくい職場なのかという点です。


社員に「もっと自分で考えてほしい」と伝えるだけでは、行動は変わりにくいものです。自分で考えるためには、判断材料が必要です。判断するためには、基準が必要です。行動するためには、どこまで任されているのかが見えている必要があります。


例えば、職場に次のような状態はないでしょうか。


  • 仕事の目的が共有されていない

  • 誰が何を担当するのか曖昧になっている

  • どこまで自分で判断してよいのか分からない

  • 失敗したときに強く責められる

  • 提案しても反応が返ってこない

  • 頑張りや工夫を見てもらえていない

  • 評価の基準が分かりにくい


このような状態が続くと、社員は自分で判断するよりも、指示や確認を待つ方が安全だと考えるようになります。これは単なる怠慢とは限りません。職場の中で、自分から動くための安心感や前向きさが弱くなっている可能性があります。


製造業と介護現場で感じた「判断しにくさ」


私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年働いてきました。メーカーの開発・試作部門では、品質や納期を守りながら、試作の結果を確認し、次の方法を考えることが必要でした。


一方で、目的や条件が十分に共有されていなければ、本人なりに工夫しようとしても、「どこまで変えてよいのか」「勝手に進めてよいのか」が分かりません。介護現場でも、利用者の状態によって対応を考える必要があります。


しかし、判断の範囲や相談の基準が曖昧であれば、職員は何か起きるたびに上司や先輩へ確認するようになります。働く側から見ると、確認が多いのは、何も考えていないからではありません。「自分で決めて問題になったら困る」「前に判断したときに注意された」「上司によって言うことが違う」と感じている場合もあります。


自分で考えて動いてほしいのであれば、本人の意欲を求めるだけでなく、判断しやすい環境を整える必要があります。


最初に見直したいのは仕事の目的


社員が自分で考えて動かない職場で、最初に見直したいのは仕事の目的です。目的が見えなければ、仕事は指示された作業になりやすくなります。自分で考えて動くとは、勝手に行動することではありません。目的に沿って、自分で判断できることです。


役割と判断範囲が曖昧だと確認が増える


次に見直したいのは、役割と判断範囲です。経営者や上司からすると、「それくらい自分で判断してほしい」と考えることが多いでしょう。しかし社員からすると、「本当に自分で決めてよいのか分からない」という場合があります。


例えば、次のような基準を明確にします。


  • この条件に該当したら上司へ相談する

  • 通常対応は任せるが、例外が起きたら報告する

  • この範囲であれば、方法は本人が工夫してよい

  • 安全や法令に関わることは必ず確認する


判断範囲が分かると、社員は安心して動きやすくなります。反対に、判断基準がなく、上司の気分や状況によって対応が変わる職場では、社員は確認を増やします。その結果、経営者からは「自分で考えない社員」に見えると思います。


相談しにくい職場では、指示を待つ方が安全になる


社員が自分で動くためには、分からないことや判断に迷ったことを相談できる必要があります。ところが、相談したときに、「それくらい自分で考えて」「前にも説明したよね」「今忙しいから後にして」といった反応が続けば、社員は相談を控えるようになります。


相談できないまま自分で動いて失敗すれば、今度は「なぜ先に聞かなかったのか」と注意されることもあります。これでは、社員はどのように行動すればよいか分かりません。相談しやすくすることは、上司がすべて答えを与えることではありません。


失敗への反応が、次の行動を変える


社員が自分で考えて動けば、うまくいかないこともあります。そのとき、失敗した事実だけを強く責められると、社員は次から自分で動くことを避けやすくなります。私自身も、気づいたことを上司へ伝えたことで関係が悪くなり、その後、同じような場面で発言をためらうようになった経験があります。


一方で、問題を伝えたときに、「教えてくれてありがとう」と受け止めてもらえると、次も伝えやすくなります。同じ社員でも、行動した後にどのような反応が返ってくるかによって、その後の相談や提案は変わります。


失敗が起きたときは、責めるだけで終わらせず、次の点を整理します。


  • 何が起きたのか

  • なぜ起きたのか

  • 次は何を変えるのか

  • どの段階で相談するのか

  • 本人だけでなく仕組みに問題はなかったか


失敗を放置する必要はありません。ただし、失敗したことと、自分で考えて行動したことを分けて見る必要があります。


頑張りや工夫を具体的に伝える


社員が自分から動き続けるためには、自分の行動を見てもらえている実感も重要です。結果だけを見ていると、日々の小さな前進は見落とされます。


例えば、


  • 問題を早めに報告した

  • 作業手順を分かりやすく整理した

  • 利用者への説明方法を工夫した

  • 前回の失敗を踏まえて確認を増やした

  • 自分の方法を新人へ共有した


といった行動です。


まとめ


社員が自分で考えて動かない原因は、能力不足や意欲の低さだけではありません。仕事の目的が分からない。役割や判断範囲が曖昧になっている。相談しにくい。提案しても反応がない。失敗すると強く責められる。このような職場状態では、社員は自分で判断するより、指示を待つ方が安全だと考えます。


自走を求める前に、目的、役割、判断範囲、相談のしやすさ、失敗への反応、工夫や前進への評価を見直すことが大切です。なお、社員へ危機感を持たせれば、自分から動くようになるとは限りません。


無料診断のご案内(経営者向け)


この無料診断は、経営者であるあなたご自身にお答えいただくことで、経営者から見た会社の状態を確認し、「今、経営者が見直すべき2つ」をお伝えするものです。


・社員の役割の分かりやすさや、相談のしにくさ、職場ルールの曖昧さなど、安心して働ける土台

・社員の達成感、認められている実感、仕事への誇り、成長実感など、仕事への前向きさ


この2つの視点を、1つの無料診断でまとめて確認できます。


[無料診断を受ける]


この記事を書いた人


メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。働く側として経験した、役割や判断範囲の分かりにくさ、相談や提案への反応による行動の変化と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。



この記事を書いた人

メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。

同じ人でも、仕事内容、職場環境、任される役割によって、力を発揮できるかどうかは変わると実感しています。

働く側としての現場経験と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。

コメント


bottom of page