採用しても人が定着しない原因|中小企業が見直したい5つの職場状態
- 佐藤孝一
- 6月23日
- 読了時間: 7分
更新日:7月30日

「求人を出しても応募が少ない」「ようやく採用できても、1年以内に辞めてしまう」「若手が仕事を覚える前に退職してしまう」
このような悩みを抱えている中小企業は少なくないと思います。
人手不足が続く中、求人広告を見直す、採用サイトを整える、給与や働き方を改善するなど、採用力を高める取り組みは重要です。
ただし、採用を強化しても人が定着しない状態が続く場合は、入社後の職場状態も確認する必要があります。
採用しても人が定着しない原因は、本人の意欲や能力、給与だけとは限りません。
社員が安心して働けるか。自分の役割を理解できているか。頑張りや成長を実感できているか。
こうした職場状態が、働き続けやすさに影響していることがあります。
人が定着しない状態は、残っている社員にも影響する
離職が続くと、採用や教育にかかる費用が増えるだけではありません。
退職した社員の仕事が、残っている社員へ集中することがあります。
その結果、
業務量が増える
休みにくくなる
新人教育の負担が繰り返される
「また辞めるのではないか」という不安が広がる
頑張っている社員ほど疲弊する
といった状態が起きやすくなります。
そして、残った社員の負担が増えることで、さらに離職が続くこともあります。
採用活動と同時に、今いる社員が安心して働き続けられる状態になっているかを確認することが大切です。
私自身の経験
私は、メーカーの開発・試作部門では約15年、介護現場では約11年働いてきました。
同じ自分であっても、仕事内容、職場環境、任される役割によって、力を発揮できるか、仕事を続けられるかは大きく変わります。
メーカーの開発・試作部門では、試作した結果を確認し、原因を考え、次の方法を試す仕事に携わりました。
介護現場では、利用者の状態に応じた対応や、周囲との情報共有が求められました。
業種は異なりますが、どちらの職場でも、
分からないことを相談できるか
自分の役割が分かるか
工夫や努力を見てもらえるか
少しずつできることが増えていると感じられるか
によって、仕事への向き合い方は変わると感じてきました。
この経験から、人が定着しない原因を本人だけに求めるのではなく、職場の状態も確認する必要があると考えています。
退職の前に見られる小さな変化
社員は、ある日突然辞めたように見えることがあります。
しかし、その前から職場での行動に小さな変化が表れていることがあります。
例えば、次のような変化です。
相談が減る
会議で発言しなくなる
改善提案をしなくなる
指示された範囲だけで仕事をする
自分なりの工夫を共有しなくなる
周囲との関わりが減る
「大丈夫です」と答えることが増える
もちろん、これらの変化がすべて退職につながるわけではありません。
ただし、以前は質問や提案をしていた社員の発言が減っている場合は、
「問題がなくなった」と判断するだけでなく、
「言っても変わらない」「余計なことを言わない方が安全」「会社に期待しなくなった」
と感じていないかを確認する必要があります。
見直したい職場状態① 相談しにくくなっていないか
社員が困ったときに相談できない職場では、小さな問題が表に出にくくなります。
例えば、
ミスを報告しにくい
忙しそうな上司へ話しかけにくい
質問すると能力不足だと思われそう
提案しても面倒そうな反応をされる
話を最後まで聞いてもらえない
といった状態です。
相談しにくい状態が続くと、経営者や管理者からは、現場で起きている問題が見えにくくなります。
そして退職の申し出を受けたときに、
「何も言っていなかった」「問題なく働いていると思っていた」と感じることがあります。
重要なのは、「何でも相談してください」と伝えることだけではありません。
社員が相談したときに、最後まで話を聞き、相談したことを否定せず、必要な返答をすることです。
見直したい職場状態② 評価・ルール・役割が曖昧になっていないか
社員が安心して働くためには、職場の基準が分かることも重要です。
例えば、次のような状態が続くと、不安や不公平感につながります。
何を頑張れば評価されるのか分からない
上司によって判断が異なる
昇給や昇格の基準が見えない
特定の社員だけルールの運用が違う
誰が何を担当するのか曖昧
どこまで自分で判断してよいか分からない
基準が曖昧な職場では、社員は仕事そのものよりも、
「上司の機嫌を損ねないか」「勝手に判断して注意されないか」を気にするようになります。
その結果、何でも確認する、指示されたことだけを行うといった行動が増えることがあります。
社員が自分で判断しやすくするためには、役割、責任、判断範囲、評価基準を分かりやすくすることが必要です。
見直したい職場状態③ 頑張りを認められている実感があるか
人は、給与だけで仕事への前向きさを保てるとは限りません。
自分の努力や工夫を見てもらえていると感じることも重要です。
例えば、
成果だけが評価される
裏方の仕事が見過ごされる
誰かが休んだときの応援が当然になっている
改善提案をしても返答がない
前よりできるようになったことを伝えられない
といった状態では、社員は認められている実感を持ちにくくなります。
見直したい職場状態④ 仕事の目的や役割が見えているか
社員が指示待ちに見える場合、意欲不足だけが原因とは限りません。
そもそも、
なぜこの仕事を行うのか
誰の役に立つ仕事なのか
自分は何を任されているのか
どこまで自分で判断してよいのか
が分からない可能性があります。
見直したい職場状態⑤ 成長している実感を持てるか
若手社員に限らず、
「この職場で働き続けて、自分は成長できるのか」という感覚は、定着に関わります。
成長支援というと、研修や資格取得を思い浮かべるかもしれません。
しかし、成長実感は日々の仕事の中でも生まれます。
前よりできる仕事が増えた
新しい仕事を任された
自分で判断できる範囲が広がった
失敗後に改善できた
上司や先輩から変化を認めてもらえた
次に目指す役割が見えている
こうした実感があると、社員は自分の将来と今の仕事を結びつけやすくなります。
反対に、毎日同じ仕事を繰り返し、成長や役割の広がりを感じられない状態が続くと、
「このままここにいても変わらない」と考えるきっかけになることがあります。
人の定着には「安心」と「前向きさ」の両方が必要
人が定着しやすい職場には、まず安心して働ける土台が必要です。
安心して働くための土台
困ったときに相談できる
労働時間や休日に過度な不安がない
職場のルールが分かる
評価や役割の基準が見える
ハラスメントへの対応がある
情報が必要な人へ共有される
その上で、仕事への前向きさを支える状態も必要です。
仕事への前向きさを支えるもの
達成感
認められている実感
仕事への誇り
使命感や責任感
成長実感
ステップアップしている感覚
安心の土台が弱い状態で、社員へ挑戦や成長だけを求めても、社員は守りに入りやすくなります。
一方で、安心して働けても、仕事への手応えや成長実感がなければ、前向きさは弱くなることがあります。
だからこそ、人の定着を考えるときは、安心と前向きさを分けて確認することが重要です。
最初に確認したいこと
採用しても人が定着しない場合は、次の項目を確認してみてください。
社員が困ったときに相談できるか
相談や提案に返答しているか
評価や職場ルールが分かりやすいか
役割や判断範囲が明確か
頑張りや工夫を具体的に伝えているか
仕事の目的を共有しているか
成長や役割の広がりを感じられるか
退職前の小さな変化を見落としていないか
すべてを一度に変える必要はありません。
まず、自社ではどこが弱くなっているのかを整理することが、改善の第一歩です。
無料診断のご案内
・労働時間、休日、相談のしにくさ、役割やルールの曖昧さなど、安心して働くための土台を確認したい場合は、無料の労務リスク診断をご利用ください。
[無料の労務リスク診断を行う]https://www.koh-sharousi.com/ansin
・社員の達成感、認められている実感、仕事への誇り、成長実感などを整理したい場合は、無料の前向きさ診断をご利用ください。
[無料の前向きさ診断を行う]https://www.koh-sharousi.com/seichou
この記事を書いた人
メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。
同じ人でも、仕事内容、職場環境、任される役割によって、力を発揮できるかどうかは変わると実感しています。
働く側としての現場経験と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。

コメント