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社員の成長実感を高める5つの方法|離職防止につながる成長支援とは

執筆者の写真: 佐藤孝一
佐藤孝一
5月5日
読了時間: 13分

更新日:9月8日


工場で若手社員が部品を手にしながら上司の指導を受けて成長している様子と、介護施設で職員が利用者に寄り添いながら温かく支援している様子を左右に分けて描いた画像

「研修を実施しているのに、社員の意欲が高まらない」「若手が成長を感じられず、早い段階で辞めてしまう」「新しい仕事を任せたいが、社員が自信を持てていない」

このような悩みを抱えている中小企業も少ないと思います。

社員の成長支援というと、研修、資格取得、勉強会などを思い浮かべるかもしれません。


もちろん、知識や技術を身につける機会は大切です。

しかし、社員が実際に成長を感じるのは、研修を受けたときだけではありません。


日々の仕事の中で、

  • 前よりできることが増えた

  • 新しい役割を任された

  • 自分で判断できる範囲が広がった

  • 工夫や改善を認めてもらえた

  • 次に目指す姿が見えてきた

と感じることも、重要な成長実感です。


社員が「この職場で成長できている」と感じられることは、仕事への前向きさを支え、離職防止にもつながります。


成長支援とは、研修を受けさせることだけではありません


成長支援は、会社が社員へ一方的に教育を与えることだけではありません。

社員本人が、

前よりできるようになった自分の仕事が役に立っている次の仕事にも挑戦してみたい

と感じられる状態をつくることです。


反対に、研修の数が多くても、実際の仕事で任される範囲が変わらず、成長を認めてもらえる機会もなければ、社員は成長を実感しにくくなります。


また、日々の仕事を通じて多くのことを身につけていても、本人がその変化に気づいていない場合もあります。


だからこそ、成長支援では、学ぶ機会を用意するだけでなく、仕事の任せ方や振り返り方、上司や先輩の関わり方も重要になります。


私自身も、職場や役割によって成長実感が変わりました


私は、医療機器の営業では約8か月で退職しました。

当時は仕事がうまくできず、自分の強みや成長を感じることもできませんでした。


一方で、メーカーの開発・試作部門では約15年間働きました。

試作品を作り、結果を確認し、原因を考え、次の方法を試す仕事に携わる中で、少しずつできることが増えていきました。

最初からすべてができたわけではありません。


経験を重ねる中で、

  • 作業の進め方が分かるようになる

  • 問題の原因を考えられるようになる

  • 次の方法を提案できるようになる

  • 任される仕事の範囲が広がる

といった変化がありました。


介護現場でも、利用者の状態を見ながら対応を考えたり、周囲と情報を共有したりする中で、以前よりできることが増えていく感覚がありました。


この経験から、成長支援とは、特別な研修だけではなく、本人が日々の仕事の中で「前よりできるようになった」と感じられる機会をつくることだと考えています。


なぜ社員の成長実感が離職防止につながるのか


社員が職場を離れる理由は、給与や人間関係だけではありません。

「このまま働き続けても変わらない」「新しいことを任せてもらえない」「成長しているのか分からない」「この会社での将来が見えない」と感じることも、離職を考えるきっかけになります。


一方で、今の職場で成長を実感できると、社員は現在の仕事と自分の将来を結びつけやすくなります。


自分のできることが増えている。会社から期待されている。次に目指す仕事が見えている。

こうした感覚は、「もう少しここで頑張ってみよう」という前向きさにつながります。


ただし、社員を会社に引き留めることだけを目的に成長支援を行うと、本人の希望と会社の期待がずれることがあります。


社員がどのような仕事を身につけたいのか、会社として何を任せたいのかを共有しながら進めることが大切です。


社員の成長実感を高める5つの方法


1.できるようになったことを具体的に伝える

社員は、自分の変化に気づいていないことがあります。

上司や先輩から見ると成長していても、本人は、

「まだ十分にできていない」「周りと比べると遅れている」と感じている場合があります。

そのようなときは、漠然と「成長したね」と伝えるのではなく、具体的な変化を言葉にします。


例えば、

・前回は確認が必要だった部分を、今回は自分で判断できましたね。

・利用者の変化に早く気づいて、周囲へ共有できるようになりましたね。

・新人が分かりやすいように、作業手順を整理できていました。


このように、できるようになった行動を具体的に伝えることで、社員本人も自分の成長を認識しやすくなります。


評価面談のときだけでなく、日々の仕事の中で短く伝えることも効果的です。


2.少し上の仕事を段階的に任せる

成長実感を持つためには、現在できる仕事を繰り返すだけでなく、少し難しい仕事へ挑戦する機会も必要です。


ただし、準備がないまま大きな仕事を任せると、社員は成長よりも不安を強く感じることがあります。


まずは、

  • 作業の一部分を任せる

  • 先輩と一緒に担当する

  • 判断が必要な場面だけ相談してもらう

  • 終了後に振り返る

というように、段階を分けます。


例えば、製造業であれば、決められた手順どおりに作業する段階から、異常が出たときの原因を一緒に考える段階へ進みます。


介護現場であれば、決められた介助を行うだけでなく、利用者の変化を観察し、必要な情報を周囲へ伝える役割を少しずつ任せます。


「できるか、できないか」の二択ではなく、どこまでなら任せられるかを考えることが大切です。


3.自分で判断できる範囲を広げる

社員が成長を実感するためには、自分で判断できる範囲が広がることも重要です。

何をするにも上司の確認が必要な状態では、知識や経験が増えても、本人は任されていると感じにくくなります。


ただし、「今日から自分で考えてください」と伝えるだけでは、社員は迷ってしまいます。


次のような範囲を明確にします。

  • 自分で判断してよいこと

  • 判断後に報告すればよいこと

  • 事前に相談が必要なこと

  • 必ず上司が判断すること


判断範囲が分かると、社員は安心して考え、行動しやすくなります。


4.振り返る機会をつくる

仕事を任せるだけでは、経験が成長実感につながらないことがあります。

仕事が終わった後に、

  • うまくできたこと

  • 難しかったこと

  • 次回変えたいこと

  • 新しく分かったこと

を短く振り返ります。


重要なのは、失敗した点だけを探すことではありません。


上司がすぐに正解を教えるのではなく、本人が考える時間をつくることも大切です。

振り返りが失敗を責める場になると、社員は本音を話さなくなります。


失敗を確認するときも、「誰が悪いか」だけではなく、「次に同じことを起こさないために何を変えるか」を一緒に考えます。


5.次に目指す役割を共有する

社員が成長を実感していても、その先が見えなければ、

「これ以上ここで何を目指せばよいのか」と感じることがあります。


管理職になることだけが、成長やステップアップではありません。


例えば、

  • 特定の業務を一人で担当できる

  • 新人へ仕事を教えられる

  • 改善提案をまとめられる

  • 難しい利用者対応を任せられる

  • 他部署との調整ができる

  • 専門分野の知識を深める

といった役割もあります。


本人の希望を確認しながら、次に目指す状態を具体的に共有します。

・次は、この業務を一人で担当できることを目指しましょう。

・今後は、新人へ説明できるところまで整理してみましょう。

・次の3か月は、この部分を自分で判断できるようにしていきましょう。


このように、次の段階が分かると、現在の仕事にも意味を感じやすくなります。


成長支援の前に「安心して働ける土台」を確認する


社員へ新しい仕事や役割を任せても、職場に大きな不安がある場合は、成長支援が負担として受け取られることがあります。


例えば、

  • 長時間労働が続いている

  • 休みを取りにくい

  • 困っても相談できない

  • 失敗すると強く責められる

  • 評価やルールが分かりにくい

  • 人によって仕事の負担が大きく異なる

という状態です。


このような職場で「もっと挑戦してほしい」と伝えても、社員は新しいことへ進む余裕を持ちにくくなります。


成長を促す前に、安心して相談できるか、失敗後に改善できるか、過度な負担がかかっていないかを確認する必要があります。


従業員が自分で考えて動かない理由とその解決策


工場で上司の指示を待つ若手社員と、介護施設で先輩職員に確認しながら利用者へ対応する若手職員の様子

従業員が自発的に動かない理由


「うちの社員は、自分で考えて動かない」「言われたことはするが、それ以上のことをしない」「何でも確認してくる。もっと自走してほしい」


このように感じている経営者は少なくありません。人手不足が続く中、経営者や上司がすべてを指示し、確認し、最後に判断する状態には限界があります。


今いる社員が自分で考え、状況に応じて判断し、力を発揮できる職場をつくりたいと考えるのは自然なことです。しかし、社員が自分で考えて動かない原因をすぐに「能力が足りない」「やる気がない」「最近の若い人は受け身だ」と判断すると、本当の原因を見落とすことがあります。


社員が動かないように見える背景には、社員が自分から動きにくい職場状態が隠れている可能性があります。


動くことができない社員なのか、動きにくい職場なのか


まず分けて考えたいのは、自分で考えて動くことができない社員なのか、自分で考えて動きにくい職場なのかという点です。


社員に「もっと自分で考えてほしい」と伝えるだけでは、行動は変わりにくいものです。自分で考えるためには、判断材料が必要です。判断するためには、基準が必要です。行動するためには、どこまで任されているのかが見えている必要があります。


例えば、職場に次のような状態はないでしょうか。


  • 仕事の目的が共有されていない

  • 誰が何を担当するのか曖昧になっている

  • どこまで自分で判断してよいのか分からない

  • 失敗したときに強く責められる

  • 提案しても反応が返ってこない

  • 頑張りや工夫を見てもらえていない

  • 評価の基準が分かりにくい


このような状態が続くと、社員は自分で判断するよりも、指示や確認を待つ方が安全だと考えるようになります。これは単なる怠慢とは限りません。職場の中で、自分から動くための安心感や前向きさが弱くなっている可能性があります。


製造業と介護現場で感じた「判断しにくさ」


私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年働いてきました。メーカーの開発・試作部門では、品質や納期を守りながら、試作の結果を確認し、次の方法を考えることが必要でした。


一方で、目的や条件が十分に共有されていなければ、本人なりに工夫しようとしても、「どこまで変えてよいのか」「勝手に進めてよいのか」が分かりません。介護現場でも、利用者の状態によって対応を考える必要があります。


しかし、判断の範囲や相談の基準が曖昧であれば、職員は何か起きるたびに上司や先輩へ確認するようになります。働く側から見ると、確認が多いのは、何も考えていないからではありません。「自分で決めて問題になったら困る」「前に判断したときに注意された」「上司によって言うことが違う」と感じている場合もあります。


自分で考えて動いてほしいのであれば、本人の意欲を求めるだけでなく、判断しやすい環境を整える必要があります。


最初に見直したいのは仕事の目的


社員が自分で考えて動かない職場で、最初に見直したいのは仕事の目的です。目的が見えなければ、仕事は指示された作業になりやすくなります。自分で考えて動くとは、勝手に行動することではありません。目的に沿って、自分で判断できることです。


役割と判断範囲が曖昧だと確認が増える


次に見直したいのは、役割と判断範囲です。経営者や上司からすると、「それくらい自分で判断してほしい」と考えることが多いでしょう。しかし社員からすると、「本当に自分で決めてよいのか分からない」という場合があります。


例えば、次のような基準を明確にします。


  • この条件に該当したら上司へ相談する

  • 通常対応は任せるが、例外が起きたら報告する

  • この範囲であれば、方法は本人が工夫してよい

  • 安全や法令に関わることは必ず確認する


判断範囲が分かると、社員は安心して動きやすくなります。反対に、判断基準がなく、上司の気分や状況によって対応が変わる職場では、社員は確認を増やします。その結果、経営者からは「自分で考えない社員」に見えると思います。


相談しにくい職場では、指示を待つ方が安全になる


社員が自分で動くためには、分からないことや判断に迷ったことを相談できる必要があります。ところが、相談したときに、「それくらい自分で考えて」「前にも説明したよね」「今忙しいから後にして」といった反応が続けば、社員は相談を控えるようになります。


相談できないまま自分で動いて失敗すれば、今度は「なぜ先に聞かなかったのか」と注意されることもあります。これでは、社員はどのように行動すればよいか分かりません。相談しやすくすることは、上司がすべて答えを与えることではありません。


失敗への反応が、次の行動を変える


社員が自分で考えて動けば、うまくいかないこともあります。そのとき、失敗した事実だけを強く責められると、社員は次から自分で動くことを避けやすくなります。私自身も、気づいたことを上司へ伝えたことで関係が悪くなり、その後、同じような場面で発言をためらうようになった経験があります。


一方で、問題を伝えたときに、「教えてくれてありがとう」と受け止めてもらえると、次も伝えやすくなります。同じ社員でも、行動した後にどのような反応が返ってくるかによって、その後の相談や提案は変わります。


失敗が起きたときは、責めるだけで終わらせず、次の点を整理します。


  • 何が起きたのか

  • なぜ起きたのか

  • 次は何を変えるのか

  • どの段階で相談するのか

  • 本人だけでなく仕組みに問題はなかったか


失敗を放置する必要はありません。ただし、失敗したことと、自分で考えて行動したことを分けて見る必要があります。


頑張りや工夫を具体的に伝える


社員が自分から動き続けるためには、自分の行動を見てもらえている実感も重要です。結果だけを見ていると、日々の小さな前進は見落とされます。


例えば、


  • 問題を早めに報告した

  • 作業手順を分かりやすく整理した

  • 利用者への説明方法を工夫した

  • 前回の失敗を踏まえて確認を増やした

  • 自分の方法を新人へ共有した


といった行動です。


まとめ


社員が自分で考えて動かない原因は、能力不足や意欲の低さだけではありません。仕事の目的が分からない。役割や判断範囲が曖昧になっている。相談しにくい。提案しても反応がない。失敗すると強く責められる。このような職場状態では、社員は自分で判断するより、指示を待つ方が安全だと考えます。


自走を求める前に、目的、役割、判断範囲、相談のしやすさ、失敗への反応、工夫や前進への評価を見直すことが大切です。なお、社員へ危機感を持たせれば、自分から動くようになるとは限りません。


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この記事を書いた人


メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。働く側として経験した、役割や判断範囲の分かりにくさ、相談や提案への反応による行動の変化と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。

この記事を書いた人


メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。

医療機器の営業では約8か月で退職する一方、メーカーの開発・試作部門では約15年間働きました。

同じ人でも、仕事の内容、職場環境、任される役割によって、力を発揮できるかどうかは変わると実感しています。

働く側としての現場経験と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。

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