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頑張っても評価されない職場で離職が増える理由

執筆者の写真: 佐藤孝一
佐藤孝一
7月8日
読了時間: 12分

更新日:9月8日


社員が辞める理由は一つではありません。給与、労働時間、人間関係、家庭の事情、将来への不安など、さまざまな要因があると思います。


ただ、その中で見落とされやすいものがあります。

それが、「頑張っても評価されていない」と感じる状態です。


ここでいう評価とは、人事評価制度だけを指しているわけではありません。日々の声かけ、仕事ぶりへの関心、成果の見え方、役割の伝え方、成長への期待なども含まれます。


社員は、会社から見て十分に評価されている場合でも、本人が「自分の努力は見られていない」と感じていると、少しずつ前向きさを失っていくことがあります。


評価されない不満は、すぐには表に出ない


「頑張っても評価されない」という不満は、最初から強い退職意思として表れるとは限りません。

最初は、少し元気がなくなる程度かもしれません。次に、会議で発言しなくなる。改善提案をしなくなる。指示されたことだけを行うようになる。最後には、「この会社で頑張っても意味がないかもしれない」と感じるようになります。


経営者から見ると、ある日突然やる気がなくなったように見えることがあります。

しかし実際には、本人の中で小さな失望が積み重なっていた可能性があります。

特に中小企業では、経営者と社員の距離が近い分、「言わなくても分かってくれているだろう」と考えやすい面があると思います。


しかし、社員側はそう受け取っていないことがあります。

・経営者は評価しているつもりでも、本人には伝わっていない。

・努力を見ているつもりでも、本人は見られていないと感じている。

・期待して任せているつもりでも、本人は放置されていると感じている。

このズレが大きくなると、離職のきっかけになっていきます。


成果だけを見ると、見えない頑張りがある


職場では、どうしても目に見える成果に注目しやすくなります。

・売上を上げた。

・大きな契約を取った。

・ミスなく仕事を終えた。

こうした成果は分かりやすく、評価しやすいものです。


一方で、見えにくい頑張りもあります。

・新人に丁寧に教えている。

・トラブルが起きないように事前に調整している。

・お客様からの小さな不満を吸収している。

・職場の雰囲気が悪くならないように気を配っている。

・誰かが困っているときに自然に助けている。

こうした仕事は、会社を支える大切な働きです。


しかし、表に出にくいため、評価や感謝の対象になりにくいことがあります。

その結果、本人は「自分ばかり損をしている」「頑張っても誰も見ていない」と感じやすくなります。


もちろん、すべてを細かく評価することは簡単ではありません。経営者も管理職も、日々の業務に追われています。

だからこそ、まずは「見えにくい頑張りが職場の中にある」という前提を持つことが大切です。


評価の曖昧さは、安心感も前向きさも下げる


評価が曖昧な職場では、社員は何を頑張ればよいのか分かりにくくなります。


たとえば、次のような状態です。

・成果を出しても、何が評価されたのか分からない

・上司によって評価の基準が違う

・声の大きい人だけが認められているように見える

・真面目に支えている人ほど評価されにくい

・昇給や役割変更の理由が見えにくい


このような状態が続くと、社員は「どう動けばよいのか」が分からなくなります。

そして、分からない状態が続くと、挑戦するよりも、余計なことをしない方が安全だと考えるようになります。


これは、社員の意欲が低いからとは限りません。

職場の中で、頑張り方や評価の方向性が見えにくくなっている可能性があります。

人は、自分の行動がどのように受け止められているか分からない状態では、前向きに動きにくくなります。


つまり、評価の曖昧さは、安心感を下げるだけでなく、仕事への前向きさも下げてしまうのです。


「褒めればよい」だけでは解決しない


頑張りを認めるというと、「とにかく褒めればよい」と考えられることがあります。

もちろん、感謝や承認の言葉は大切です。


「助かった」「よく対応してくれた」「お客様が喜んでいた」「以前よりできることが増えた」

こうした言葉があるだけでも、社員の受け止め方は変わります。


ただし、表面的に褒めるだけでは、かえって不信感につながることもあります。

大切なのは、何を見て、何を認めているのかを具体的に伝えることです。


たとえば、「頑張っているね」だけではなく、「新人への説明が丁寧だったので、相手が安心して質問できていた」「クレームになる前に早めに報告してくれたので、対応が遅れずに済んだ」「前回よりも自分で判断して進められる範囲が広がっている」というように、行動や変化に目を向けることが大切です。


社員は、自分の何が評価されているのかが分かると、次にどう動けばよいかを考えやすくなります。

これは、前向きさにつながる重要な土台です。


離職を防ぐには、評価制度より先に職場状態を見る


評価の問題というと、すぐに人事評価制度を作る話になりがちです。

もちろん、評価制度や賃金制度を整えることは重要です。


しかし、制度を作る前に確認しておきたいことがあります。

それは、今の職場で社員がどのように感じているかです。


社員は、

・自分の仕事に達成感を持てているのか。

・認められている実感があるのか。

・仕事に誇りを持てているのか。

・役割や期待が伝わっているのか。

・成長している実感があるのか。

こうした状態を確認しないまま制度だけを整えても、現場の納得感につながらないことがあります。


反対に、職場状態を見える化すると、制度を作る前に見直すべきことが見えてきます。

たとえば、管理職の声かけを見直す。役割分担を整理する。評価の基準を簡単な言葉で共有する。裏方の貢献にも目を向ける。成長した点を本人に伝える。

大きな制度変更をしなくても、始められることはあります。


人が定着する職場には、認められている実感がある


人が定着しやすい職場には、安心して働ける土台があります。

同時に、仕事に対する前向きさもあります。


その前向きさを支えるものの一つが、「自分は認められている」という実感です。

これは、甘やかすことではありません。何でも褒めることでもありません。社員の言い分をすべて受け入れることでもありません。

会社として大切にしている働き方を伝え、必要な行動を認め、成長を見える形で伝えることです。


社員が「この会社で頑張る意味がある」と感じられる職場では、指示待ちや受け身も少しずつ変わりやすくなります。


少人数でも利益を出せる会社に近づくためには、社員の頑張りが見え、認められ、次の行動につながる職場状態を整えることが大切です。


まずは前向きさを見える化することから


「社員が評価に不満を持っているのか分からない」「頑張っている社員ほど疲れている気がする」「最近、改善提案や発言が減っている」「若手がこの会社で成長できると感じているか不安」


このような場合は、まず職場の前向きさを見える化することが大切です。


孝(こう)社労士事務所では、社員の仕事への前向きさを確認する入口として、前向きさ診断を用意しています。


前向きさ診断では、

・達成感

・認められている実感

・仕事に対する誇り

・使命感・責任感

・成長実感やステップアップ感などの視点から、現在の職場状態を整理します。


目的は、経営者や社員を責めることではありません。

社員が前向きに働きにくくなっている背景を確認し、人が定着しやすい職場づくりにつなげることです。


頑張っても評価されない職場では、社員の前向きさは少しずつ弱くなります。

離職が起きてから慌てるのではなく、まずは今の職場で、社員の頑張りが見え、認められ、次の成長につながっているかを確認してみてください。


従業員が自分で考えて動かない理由とその解決策


工場で上司の指示を待つ若手社員と、介護施設で先輩職員に確認しながら利用者へ対応する若手職員の様子

従業員が自発的に動かない理由


「うちの社員は、自分で考えて動かない」「言われたことはするが、それ以上のことをしない」「何でも確認してくる。もっと自走してほしい」


このように感じている経営者は少なくありません。人手不足が続く中、経営者や上司がすべてを指示し、確認し、最後に判断する状態には限界があります。


今いる社員が自分で考え、状況に応じて判断し、力を発揮できる職場をつくりたいと考えるのは自然なことです。しかし、社員が自分で考えて動かない原因をすぐに「能力が足りない」「やる気がない」「最近の若い人は受け身だ」と判断すると、本当の原因を見落とすことがあります。


社員が動かないように見える背景には、社員が自分から動きにくい職場状態が隠れている可能性があります。


動くことができない社員なのか、動きにくい職場なのか


まず分けて考えたいのは、自分で考えて動くことができない社員なのか、自分で考えて動きにくい職場なのかという点です。


社員に「もっと自分で考えてほしい」と伝えるだけでは、行動は変わりにくいものです。自分で考えるためには、判断材料が必要です。判断するためには、基準が必要です。行動するためには、どこまで任されているのかが見えている必要があります。


例えば、職場に次のような状態はないでしょうか。


  • 仕事の目的が共有されていない

  • 誰が何を担当するのか曖昧になっている

  • どこまで自分で判断してよいのか分からない

  • 失敗したときに強く責められる

  • 提案しても反応が返ってこない

  • 頑張りや工夫を見てもらえていない

  • 評価の基準が分かりにくい


このような状態が続くと、社員は自分で判断するよりも、指示や確認を待つ方が安全だと考えるようになります。これは単なる怠慢とは限りません。職場の中で、自分から動くための安心感や前向きさが弱くなっている可能性があります。


製造業と介護現場で感じた「判断しにくさ」


私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年働いてきました。メーカーの開発・試作部門では、品質や納期を守りながら、試作の結果を確認し、次の方法を考えることが必要でした。


一方で、目的や条件が十分に共有されていなければ、本人なりに工夫しようとしても、「どこまで変えてよいのか」「勝手に進めてよいのか」が分かりません。介護現場でも、利用者の状態によって対応を考える必要があります。


しかし、判断の範囲や相談の基準が曖昧であれば、職員は何か起きるたびに上司や先輩へ確認するようになります。働く側から見ると、確認が多いのは、何も考えていないからではありません。「自分で決めて問題になったら困る」「前に判断したときに注意された」「上司によって言うことが違う」と感じている場合もあります。


自分で考えて動いてほしいのであれば、本人の意欲を求めるだけでなく、判断しやすい環境を整える必要があります。


最初に見直したいのは仕事の目的


社員が自分で考えて動かない職場で、最初に見直したいのは仕事の目的です。目的が見えなければ、仕事は指示された作業になりやすくなります。自分で考えて動くとは、勝手に行動することではありません。目的に沿って、自分で判断できることです。


役割と判断範囲が曖昧だと確認が増える


次に見直したいのは、役割と判断範囲です。経営者や上司からすると、「それくらい自分で判断してほしい」と考えることが多いでしょう。しかし社員からすると、「本当に自分で決めてよいのか分からない」という場合があります。


例えば、次のような基準を明確にします。


  • この条件に該当したら上司へ相談する

  • 通常対応は任せるが、例外が起きたら報告する

  • この範囲であれば、方法は本人が工夫してよい

  • 安全や法令に関わることは必ず確認する


判断範囲が分かると、社員は安心して動きやすくなります。反対に、判断基準がなく、上司の気分や状況によって対応が変わる職場では、社員は確認を増やします。その結果、経営者からは「自分で考えない社員」に見えると思います。


相談しにくい職場では、指示を待つ方が安全になる


社員が自分で動くためには、分からないことや判断に迷ったことを相談できる必要があります。ところが、相談したときに、「それくらい自分で考えて」「前にも説明したよね」「今忙しいから後にして」といった反応が続けば、社員は相談を控えるようになります。


相談できないまま自分で動いて失敗すれば、今度は「なぜ先に聞かなかったのか」と注意されることもあります。これでは、社員はどのように行動すればよいか分かりません。相談しやすくすることは、上司がすべて答えを与えることではありません。


失敗への反応が、次の行動を変える


社員が自分で考えて動けば、うまくいかないこともあります。そのとき、失敗した事実だけを強く責められると、社員は次から自分で動くことを避けやすくなります。私自身も、気づいたことを上司へ伝えたことで関係が悪くなり、その後、同じような場面で発言をためらうようになった経験があります。


一方で、問題を伝えたときに、「教えてくれてありがとう」と受け止めてもらえると、次も伝えやすくなります。同じ社員でも、行動した後にどのような反応が返ってくるかによって、その後の相談や提案は変わります。


失敗が起きたときは、責めるだけで終わらせず、次の点を整理します。


  • 何が起きたのか

  • なぜ起きたのか

  • 次は何を変えるのか

  • どの段階で相談するのか

  • 本人だけでなく仕組みに問題はなかったか


失敗を放置する必要はありません。ただし、失敗したことと、自分で考えて行動したことを分けて見る必要があります。


頑張りや工夫を具体的に伝える


社員が自分から動き続けるためには、自分の行動を見てもらえている実感も重要です。結果だけを見ていると、日々の小さな前進は見落とされます。


例えば、


  • 問題を早めに報告した

  • 作業手順を分かりやすく整理した

  • 利用者への説明方法を工夫した

  • 前回の失敗を踏まえて確認を増やした

  • 自分の方法を新人へ共有した


といった行動です。


まとめ


社員が自分で考えて動かない原因は、能力不足や意欲の低さだけではありません。仕事の目的が分からない。役割や判断範囲が曖昧になっている。相談しにくい。提案しても反応がない。失敗すると強く責められる。このような職場状態では、社員は自分で判断するより、指示を待つ方が安全だと考えます。


自走を求める前に、目的、役割、判断範囲、相談のしやすさ、失敗への反応、工夫や前進への評価を見直すことが大切です。なお、社員へ危機感を持たせれば、自分から動くようになるとは限りません。


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この記事を書いた人


メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。働く側として経験した、役割や判断範囲の分かりにくさ、相談や提案への反応による行動の変化と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。


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