加点主義の評価と声かけ|部下の提案・相談・挑戦を増やす方法
- 佐藤孝一
- 2024年9月20日
- 読了時間: 6分
更新日:7 日前

「部下から改善提案が出てこない」「何でも確認してきて、自分で判断しない」「新しいことに挑戦しようとしない」
このような状態が見られると、本人の能力や意欲に原因があるように感じることがあります。
しかし、社員が自分から動くかどうかは、行動した後に職場からどのような反応が返ってくるかにも左右されます。
提案しても返答がない。相談すると面倒そうな顔をされる。失敗すると、挑戦したことまで否定される。
このような経験が続けば、社員は次第に、
「余計なことはしない方が安全」「言われたことだけをしておこう」
と考えるようになります。
一方で、小さな工夫や早めの相談を具体的に認めてもらえると、次も行動しやすくなります。
この記事では、社員の提案、相談、挑戦を増やすために、加点主義の評価と声かけをどのように取り入れるかを解説します。
加点主義とは、何でも褒めることではない
加点主義というと、
「社員を甘やかすこと」「失敗を注意しないこと」「何でも褒めること」
のように受け取られることがあります。
しかし、加点主義は、問題や失敗を見逃す考え方ではありません。
結果だけでなく、仕事を良くするために社員が取った行動にも目を向ける考え方です。
例えば、次のような行動です。
問題が大きくなる前に相談した
改善方法を提案した
お客様や利用者のために工夫した
失敗を振り返り、次の仕事に生かした
新人が間違えにくい方法を考えた
自分の経験や工夫を周囲に共有した
こうした行動を具体的に認めることで、
社員は、
「次も相談してよい」「提案しても大丈夫」「自分の行動を見てもらえている」
と感じやすくなります。
その感覚が、次の前向きな行動につながります。
同じ意見でも、相手の反応によって次の行動は変わる
私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年、働く側として仕事をしてきました。
製造業では、試作したものに問題があれば、原因を確認し、条件や方法を変えて、もう一度試す必要があります。
介護現場でも、利用者の状態や現場の状況に応じて、気づいたことを職員間で伝え合うことが欠かせません。
しかし、問題に気づいたからといって、いつでも意見を伝えられるわけではありません。
私自身、上司の判断に間違いがあると思い、指摘したことで関係が悪くなった経験があります。
その後、同じような場面があっても、
「伝えたら、また関係が悪くなるのではないか」「反論や説明に時間がかかるのではないか」
と考え、伝えることをためらうようになりました。
一方で、気づいたことを伝えたときに、
「教えてくれてありがとう」と受け止めてもらえた経験もあります。
そのような反応があると、次に問題へ気づいたときも、
「今回も伝えてよい」と思いやすくなります。
同じ内容を伝えても、相手の反応によって、その後の相談や提案のしやすさは変わります。
加点主義で大切なのは、提案をすべて採用することではありません。
まず、気づいたことを伝えた行動を受け止めることです。
加点主義で見たい5つの行動
1.問題を早めに相談したこと
社員が早い段階で相談すると、問題が大きくなる前に対応できます。
しかし、相談したときに、
「それくらい自分で考えて」「前にも説明したよね」
と返されると、次から相談を控える可能性があります。
相談内容だけでなく、早めに伝えた行動を認めます。
2.改善方法を提案したこと
提案を採用できるかどうかと、提案した行動への評価は分けて考えます。
例えば、
介護現場では、
・この手順では、新しく入った職員が間違えやすいと思います。
という意見が出ることがあります。
すぐに手順を変更できない場合でも、次のように返すことができます。
・気づいたことを伝えてくれてありがとうございます。すぐに変更できるかは確認が必要ですが、間違えやすい部分がないか一度確認します。
提案が採用されなかったとしても、受け止めてもらえれば、社員は次も意見を伝えやすくなります。
3.仕事を良くするために工夫したこと
社員が行った小さな工夫は、結果だけを見ていると見落とされやすくなります。
例えば、
作業しやすい順番を考えた
ミスを防ぐために確認表を作った
利用者に伝わりやすい説明方法を考えた
新人が迷わないように手順を整理した
といった行動です。
4.失敗を次の仕事に生かしたこと
失敗そのものを褒める必要はありません。
見るべきなのは、その後に何を考え、どのように行動を変えたかです。
メーカーの開発・試作部門では、一度で思いどおりの結果が出ないこともあります。
試作した結果を確認し、原因を考え、条件や方法を変えて、再び試すことが必要です。
このとき、失敗した事実だけを責められると、社員は新しい方法を試しにくくなります。
一方で、失敗後の改善を具体的に認めると、次の行動につながりやすくなります。
5.工夫や気づきを周囲へ共有したこと
仕事のできる社員は、自分なりに工夫していることがあります。
しかし、その工夫が本人の中だけに留まると、本人が休んだり退職したりしたときに、職場へ残りません。
自分の経験や方法を周囲へ共有した行動も、加点して見る必要があります。
改善点を伝えるときも、前進を否定しない
加点主義でも、問題点や改善点は伝えます。
ただし、社員の行動をすべて否定するのではなく、よかった点と改善すべき点を分けます。
部下の行動を止めやすい上司の反応
社員の相談や提案を止めるのは、強い叱責だけではありません。
日常の小さな反応も、その後の行動に影響します。
例えば、次のような反応です。
話を途中で遮る
パソコンや書類を見たまま返事をする
面倒そうな表情をする
提案を聞いたまま返答しない
「前にも言ったよね」で終わらせる
結果だけを見て、工夫や過程に触れない
他の社員と比較する
一度の反応だけで、社員がすぐに発言しなくなるとは限りません。
しかし、このような経験が繰り返されると、社員は小さな相談や提案から控えるようになります。
表面上は問題のない社員に見えても、内心では、
「言っても無駄」「自分で抱えた方が早い」
と判断している可能性があります。
守るべきことは、ルールや仕組みで守る
加点主義は、社員に自由に行動させることではありません。
・製造業では、安全や品質、納期を守る必要があります。
・介護現場でも、利用者の安全、個人情報、服薬、事故防止など、守らなければならない基準があります。
労務管理についても、労働時間、休日、ハラスメント、社会保険など、曖昧にしてはいけないことがあります。
守るべきことは、次のような仕組みで守ります。
ルール
手順書
教育
判断基準
チェック体制
相談経路
そのうえで、ルールの範囲内で行われた提案、工夫、相談、再挑戦を認めます。
「守ること」と「自分で考えて動くこと」を分けて設計することが重要です。
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減点主義と加点主義の違いや、職場全体を見直す方法については、次の記事で解説しています。
この記事を書いた人
メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。
働く側として経験した相談や提案のしやすさ、周囲の反応による行動の変化と、社会保険労務士の視点から、人が定着し、前向きに働きやすい職場づくりについて発信しています。

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