危機感だけでは社員は自走しない|前向きな行動が続く職場のつくり方
- 佐藤孝一
- 2024年8月20日
- 読了時間: 6分
更新日:7 日前

「言われたことはするが、自分から提案が出てこない」「目標を立てても、思ったように行動が広がらない」「もっと危機感を持って仕事をしてほしい」
社員が自分から動かないとき、経営者や上司は、
「会社の厳しい状況を理解していないのではないか」「危機感が足りないのではないか」
と感じると思います。
確かに、課題意識や危機感が行動のきっかけになることはあります。
しかし、危機感だけで社員を動かし続けることには限界があります。
不安や叱責を原動力にすれば、社員は一時的には動くかもしれません。
ただし、その状態が続けば、
失敗しないことを優先する
上司の指示を待つ
新しい提案を控える
問題を隠す
疲労や消耗が強くなる
といった状態につながる可能性があります。
社員が継続して自分から動くためには、危機感とは別の土台が必要です。
私は、その土台を、
安心して働ける状態と、仕事への前向きさという2つの視点で考えています。
危機感は行動のきっかけにはなる
会社の業績が悪化している。納期が迫っている。人手が不足している。重大な問題が起きている。
このような状況では、危機感が集中力を高め、短期的な行動につながることがあります。
しかし、危機感には期限があります。
常に、
「このままでは会社が危ない」「結果を出さなければ評価が下がる」「失敗すれば責任を問われる」という状態が続けば、社員は前向きに考えるより、自分を守ることを優先するようになります。
行動しているように見えても、その目的は、
「仕事を良くしたい」ではなく、
「怒られたくない」「失敗したくない」「評価を下げたくない」
になっているかもしれません。
これでは、自分から考え、工夫し、改善する行動は続きにくくなります。
製造業と介護現場で感じた
私は、メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年働いてきました。
メーカーの開発・試作部門では、品質や納期を守るために、緊張感を持って仕事をする場面がありました。
介護現場でも、利用者の安全や体調の変化に対応するため、気を抜けない場面があります。
どちらの仕事にも、一定の緊張感や課題意識は必要です。
ただし、同じ緊張感でも、
「より良い結果を出したい」「利用者の役に立ちたい」「次はもっと良くしたい」
という気持ちから生まれるものと、
「失敗したら怒られる」「責任を負わされたくない」「余計なことはしない方がよい」
という不安から生まれるものでは、その後の行動が違います。
前者は、工夫や相談につながりやすくなります。
後者は、指示待ちや沈黙につながりやすくなります。
必要なのは、危機感をなくすことではありません。
危機感だけに頼らず、社員が前向きに行動を続けられる状態をつくることです。
前向きさが「考える行動」のきっかけになる
社員が自分から動くためには、
「もっと良くしたい」「この仕事に関わりたい」「自分の力を役立てたい」
という仕事への前向きさが必要です。
前向きさがあると、社員の中で次の循環が生まれやすくなります。
仕事を良くしたいと思う
より良い方法を考える
小さく試してみる
結果を振り返る
次の行動につなげる
反対に、前向きさが弱くなると、
指示されたことだけを行う
失敗しないことを優先する
改善提案を控える
工夫を自分の中だけに留める
という状態になりやすくなります。
自走を求める前に、社員が仕事へ前向きに関われる状態になっているかを確認する必要があります。
安心して働けなければ、前向きさは続かない
どれだけ仕事に関心があっても、
人間関係への不安がある
相談しにくい
評価基準が分かりにくい
働き方に不安がある
失敗すると強く責められる
という状態では、人は守りに入りやすくなります。
社員が前向きに行動するためには、安心して働ける土台が必要です。
例えば、次のような状態です。
労働時間が適切に管理されている
休日や休暇を取得できる
ハラスメントへの対応が明確になっている
相談できる相手や経路がある
役割や評価の基準が分かりやすい
失敗後に改善し、再挑戦できる
安心とは、仕事を楽にすることや、社員を甘やかすことではありません。
社員が自分を守ることばかりに力を使わず、仕事へ力を向けられる状態です。
達成感と承認が、次の行動を支える
社員が自分から動いても、何の反応も返ってこなければ、行動を続けるのは難しくなります。
特に、結果が出るまで時間がかかる仕事では、途中の工夫や前進を見てもらえている実感が重要です。
例えば、
早めに相談した
改善案を出した
前回より確認を増やした
新人へ方法を共有した
利用者やお客様に合わせて工夫した
といった行動です。
目標を押しつけるだけでは自走につながらない
目標を設定することは大切です。
ただし、数字や期限だけを一方的に与えても、社員が自分から動くとは限りません。
目標を伝えるときは、
なぜ必要なのか
誰にどのような価値を届けるのか
本人はどの部分を担当するのか
どこまで方法を任せるのか
を共有します。
社員が目標の意味を理解し、自分の役割とのつながりを感じられると、
「どうすれば達成できるか」を考えやすくなります。
危機感だけで目標を追わせるのではなく、目的と役割を共有することが重要です。
危機感だけで動かしていないかを確認する
次のような状態がある場合、危機感が強くなりすぎている可能性があります。
失敗しないことが最優先になっている
会議で反対意見が出ない
報告が遅くなっている
改善提案が減っている
何でも上司へ確認する
社員が仕事の目的より上司の反応を気にしている
行動後に達成感ではなく疲労感だけが残っている
社員に危機感を求める前に、
安心して相談できるか
仕事の目的が分かるか
工夫できる範囲があるか
行動を見てもらえているか
成長している実感を持てるか
を確認してみてください。
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この記事を書いた人
メーカーの開発・試作部門で約15年、介護現場で約11年勤務。
製造業と介護の現場で働いた経験と、社会保険労務士の視点から、安心して働ける土台と仕事への前向きさを両立する職場づくりについて発信しています。



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